会場は市の中心部にある金沢大学のサテライト・プラザ。今年は発表者の顔ぶれも多彩で、若手の女流研究者2名、富山大の中堅、また東京から参加の女流のヴェテラン、計4名を数えた。伝統ある研究会で会員の高齢化が危惧されていたが、この若返りは驚きでもあり、また喜ばしい現象でもある。内容もグリルパルツァ―の作品のみに限定されず、シュティフタ―をボヘミアの森という背景の中で取り上げた発表もあった。
特筆すべきは戯曲『夢は人生』の本邦初訳(2019年、水声社)が訳者城田千鶴子氏によって披露されたことだろう。グリルパルツァーを論議する場でしばしば取り上げられる作品でありながら、なぜかこれまでは日本語で読むことは叶わなかった。それが可能となった。城田氏の尽力を多とし、感謝したい。
城田氏は巻末で、本篇の先行作品としてカルデロンの『人生は夢』、ヴォルテールの『白と黒』などを挙げておられるが、ウイーン文化に対する南方のイタリアやイベリア半島の文化の影響を考慮すれば、カルデロンを今少し詳しく取り上げては如何かと私見する。
発表会のあとは恒例の飲み会。駅近くまで(かなりある)歩いて居酒屋「かじ亭」へ上り、総勢20名ほど海の幸と地酒を堪能し、歓談する。
一昨年は地酒「獅子吼」などを酌んで談論風発の一刻を過ごしたが、今年も2次会、3次会と宴は続いた。
大阪を覚悟して出たものの、金沢は意外と寒くなく、その分いささか風情に欠ける思いがする。しかし人出は相変わらず多く、ホテルの朝食の席でも聞こえてくるのは坂東訛りばかりというありさま。老母への土産に末広堂の「きんつば」、妻へは「手取川」一本を提げて早々に車中の人となる。
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